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2007年度S-AIR AWARD 選考委員 総評

*Japanse text only*

S-AIR AWARD 2007は、「台湾Stock 20」、応募者が自ら滞在場所を選ぶ「セルフ・プロデュース」の2部門に、それぞれ1名のアーティスト/クリエーターを2ヶ月間海外にレジデンス派遣するものです。台湾への派遣は、一次審査のみを札幌の審査員で行い、数名に絞りました。受け入れ先である台湾の最終選考を経て決定しました。セルフ・プロデュースは、一次審査、面接審査ともに札幌で行い、各受賞者を決定致しました。

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審査結果は下記となります。

◆台湾Stock 20/ 久野志乃:2007年11月-12月の二ヶ月間滞在予定

◆セルフ・プロデュース/ ドライブホーム(野上裕之+岡和田直人)
  :ComPeung(タイ)へ2007年12月-2008年1月の二か月滞在予定

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主にセルフ・プロデュース、ほか応募者全般に対して
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総評/ 植田暁(うえださとし)

初めて審査に参加させていただいた。美術家の皆さんが迸る感性をお持ちだったのは嬉しい。皆さんに私のような門外漢が美術家に期待するのは、個人の経験と作品を通じて、新しい世界を見せてくれる点、その先にある公の価値といえる隠された感性(公益性とは違う)を生み出してくれる点である。つまり制作にはアウトプットが二段階あると考える。今回の選考では、前者に直接結びつく、作品を作りたい衝動を感じられた点は喜ばしかった。反面、後者の制作の先に向かう、強い意思が今ひとつ弱かった点が心残りだった。最後に、選考委員の二先生と議論できた機会に感謝したい。

ドライヴ・ホーム
セルフビルドの経験もある私としては、作品の持つ力は十分理解できる。その共感を差し引いたところで、公園、テラン・ヴァーグ、放置されている家とその庭といった着目点を評価した。いずれも我が国では非常に遅れた視点である。また現在進行中と提案されたプロジェクトに埋め込まれた人的交流についても期待したい。美術家が不在となったときに残される不思議な仕組みも持続可能な作品といえると考えるからだ。今後期待するのは、これらの視点をもっと平たく言語化することだ。控えめである意味を(北海道人らしい過度な遠慮ではなく)、もっと意図的に考えてほしい。感覚が超優先しているアンバランスさが魅力だが、それゆえ今回の選択は括弧付きである。

植田暁(略歴)
1963年札幌生まれ。イタリアの街並みや景観の保存活用を研究。建てないでいながら建築家にしかできない空間を追求している。アートの分野では佐賀町エキジビットスペース、広島市現代美術館、スキマプロジェクトなどでインスタレーションの経験を持つ。1986年風の記憶工場設立。1987年工学院大学研究科建築学専攻修士過程修了。1990年イタリア政府給費留学生ローマ大学建築学科都市地域計画学科。2003年・NPO景観ネットワーク設立。現在、室蘭工業大学、北海道工業大学、北海学園大学非常勤講師、放送大学北海道地区面接講師(以上建築学)、北海道教育大学釧路校非常勤講師(人文地理学)。建築少数、著書多数。

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総評/ 伊藤隆介(いとうりゅうすけ)

そもそもアーティストがアーティストをジャッジすることには無理がある。自分も
日々のプレゼン、コンペでは勝ったり負けたり(というか負けたり負けたり)だか
らあまりに身につまされます。だから今回の審査にあたっては、作家たる応募者
の仕事の内容、渡航滞在の必要の、「説得力」を見せてもらうことにしました。
アーティストにとって海外での滞在は、自分と自分の文化、そして制作活動の
意味を問う、絶好のチャンスです。しかしその目的が単なる「自分探し」ならば、
自分の金で渡航滞在すればいい。若いアーティストは貧乏であってもいいが、物
乞いだと困る。大切なのは、自分が助成を受けることが、スポンサー(今回は納
税者)にとってどんな文化的な意味があるのかを正々堂々と主張することと思い
ます。つまり、異性(あるいは同性)を口説くのと同じで、こちらを上手く「その
気」にさせてほしいのです。そういう点において、今回の各申請者のプレゼンテー
ションはあまりにも拙かったです。作品のレベル、活動への情熱についてではな
く、作家としての社会への姿勢が幼かった。「君を幸せに出来るかわからないけ
ど、僕が幸せになれるんじゃないかな〜と思うから結婚してほしい」なんて誘い
方で成功するのは、『釣りバカ日誌』のハマちゃんだけです。
いっそ「該当者なし」でもいいのでは…と傾いたものの、受賞者を選ぶことになり
ました。受賞の岡和田さん、野上さんのプロジェクトは、出たとこ勝負の一点突破
という思考のプロセスがあまりに不器用ではあるけれど、そのための労働をいとわ
ない姿勢に誠意を感じました。タイでの活動で、その熱意に確かな呼び名をつけ
てほしいです。僅差で及ばなかった大黒さんにはその努力を支える破天荒さとい
うエンジン探しを、合田さんにはその前向きな実験精神を持続してほしいと思いま
す。皆さんの今後のご活躍を期待します。

伊藤隆介(略歴)
映像作家・美術作家。シカゴ美術館付属大学大学院修了、現在北海道教育大学芸
術課程准教授。近年の展覧会に「日本の実験映画」(ポンピドゥーセンター)
「福岡アジア美術トリエンナーレ」(福岡アジア美術館)など。

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総評/芹沢高志(せりざわたかし)

正直にいえば、選考ではかなり迷いました。しかしS-AIRが関わる以上、ある程度表現スタイルが確立した方よりも、リスクは伴うものの、どのように変わっていくかわからない、予測不可能な方を選んでみたいと思いました。派遣先となるタイ/チェンマイのCom Peungという組織への関心も、ドライブホームを選んだひとつの理由です。

芹沢高志(略歴)
1951年東京生まれ。89年、P3 art and environmentを設立。以後、現代美術、環境計画を中心に、数多くのプロジェクトを国際的に展開している。http://p3.org/。帯広競馬場で開かれた国際現代美術展『デメーテル』の総合ディレクター(2002年)。アサヒ・アート・フェスティバル実行委員(2002年〜2007年)。横浜トリエンナーレ2005キュレーター。著書に『この惑星を遊動する』(岩波書店)、『月面からの眺め』(毎日新聞社)など。

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Stock 20/ 選考理由

台湾からのコメント待ち、もうしばらくお待ち下さい。

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以上です。

NPO法人S-AIR
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by sairoffice | 2007-06-21 14:48